街中やお寺などでよく見かけるお坊さんの袈裟。
その色は、お坊さんの階級を表しているということをご存知でしょうか?
日本では、僧侶(お坊さん)の階級は「僧階」によって定められています。
僧階は、得度(出家)してから修行を積み重ねていくことで、昇格することができます。
この僧階によって袈裟の色も定められており、一般的に、色が濃いほど階級が高いとされています。
本記事では、お坊さんの袈裟の色と階級について、詳しく解説します。
お坊さんの袈裟の色が違う理由は?
お坊さんの袈裟の色が濃いほど階級が高いと言われていますが、その色が決まる僧階とは一体どんなものなのでしょうか。
端的にいうと僧階とは、仏教において僧侶の位を表すもので、これは得度式を経て得られる「得度」から始まり、最高位の「大僧正」まであります。
袈裟の色は、僧階が高いほど明るい色になります。
色の種類は大きく分けて五つあり、僧階の高い順に以下のようになります。
緋色:大僧正
紫色:権大僧正、中僧正
緑色:大僧都、権大僧都
水色:大律師、律師
黒色:修行中
なぜお坊さんの袈裟はこのように色が違うのか、その理由は遥か1,000年以上前に遡ります。
当時(奈良・平安時代)において僧侶の権力は絶大なものがあり、その権力を盾に不正や非行を働く僧と尼が少なからずいたそうです。
そんな僧侶を取り締まるために、中央国家は僧官(そうかん)というポストを用意し、有能な僧侶をこれに任命し行政に組み入れました。
僧官の役職によって着用する服の色が決まっており、その名残りで、現在においてもお坊さんの袈裟の色が違うというわけです。
袈裟の色の意味
お坊さんの袈裟の色は、それぞれどのような意味を表しているのかを、ここではみていきます。
袈裟の色に込められた意味を理解することで、各宗派の教義への深い理解に繋がると思います。
ただ、宗派によってはこれらの色以外を用いることもあり、また、宗派内でも地域や寺院によって異なる場合があるため、一概に全ての寺院や僧侶に当てはまるわけではないので、この点だけ注意してください。
- 黒色・灰色宗派
主に禅宗(曹洞宗、臨済宗など)で見られます。
意味
禅宗では、簡素さと内面への集中を重視します。
黒色や灰色はこの簡素さを象徴し、無駄を排除し、内面の平穏と悟りに集中する姿勢を表しています。 - 紺色宗派
浄土宗や浄土真宗など。
意味
紺色は、静謐さや穏やかさを象徴しており、信徒に安心感や平和な心をもたらすことを意味します。
また、この色は慈悲深い阿弥陀仏の教えを背景に持つ宗派で好まれることが多いです。 - 黄色・橙色宗派
特定の宗派で一般的というわけではありませんが、テーラワーダ仏教や初期の仏教徒が着用することがあります。
意味
放棄と謙虚さを象徴します。
日本ではあまり一般的ではありませんが、東南アジアの僧侶の袈裟でよく見られる色です。
この色は、仏教の基本的な教えである煩悩からの解放や、世俗的な欲望からの自由を象徴しています。 - 紫色宗派
真言宗や天台宗などで使用されることがあります。
意味
高貴さや精神性の高さを象徴しています。
紫色は、古来より貴族や高位の僧侶に関連付けられており、宗教的な権威や精神的な深さを表す色とされています。 - 白色宗派
白色の袈裟は、特定の儀式や修行僧、または死を悼む際に着用されることがあります。
意味
純潔や清浄を象徴し、新たな始まりや終わりを示す色として用いられます。
特に修行僧が着用する場合、精神的な浄化や煩悩の放棄を象徴しています。
袈裟の色と階級の由来
お坊さんの袈裟の色と階級のルーツは、古代インドにあります。
当時、仏教では、袈裟の色を僧侶の階級や職業によって分けていました。
その後、仏教はシルクロードをまたいで中国に渡ったのですが、中国では僧階が高いほど明るい色の袈裟を着用するようになり、日本に伝来した際にも、そのまま中国に倣って、袈裟の色を僧階によって分けるようになったんですね。
ですので、お坊さんの袈裟の色が階級によって分かれているのは、中国の慣習を日本に持ち込んで、それがそのまま浸透したものだと言えます。
お坊さんの袈裟の色と階級は、仏教における重要な要素のひとつで、その色は、僧侶の位を表すものであるため、僧侶の威厳や権威を象徴するものと言っていいでしょう。
袈裟の色で、お坊さんの位がわかるのはわかりやすくでいいですね。
まとめ
お坊さんの袈裟の色が違う理由や、その意味・階級制度について触れました。
袈裟の色は僧階の高い順に、緋色→紫色→緑色→水色→黒色です。
お葬式や、お坊さんの法話を聞く機会があったら、まとっている袈裟に着目してみると、また違った見方ができるかもしれません。